資環研について

ごあいさつ

資環研新所長 柳橋 泰生

 資源循環・環境制御システム研究所(略称:資環研)は、1997年に文部省学術フロンティア事業に採択され、1998年4月に、地域の環境研究の拠点づくりを目的に設置されました。
 初代の花嶋正孝所長は、廃棄物を取り扱うにあたって、廃棄物を取り巻く環境を安全に制御しつつもその中から新しい資源が生じてくることを実証することを目的にプロジェクトを推進しました。
 2002年4月からの第2期の中野勝之所長は、「環境教育」の推進および「国際化」への取り組みを進めました。
 2008年6月からの第3期の樋口壮太郎所長は、約12年間にわたり、「環境修復と未利用資源の資源化」の研究を進め、産学官連携による環境ビジネスの創出、アジアとの国際産学連携による国際貢献、地域との連携による地域貢献に努めてきました。 これらは多くの成果を産み、特に、最終処分技術の分野では現在のわが国の代表的な技術の多くがここから発信され、全国の自治体や事業者に活用されています。また、実証に用いたこれらの施設を一般市民に開放することにより、廃棄物処理や資源化に対する不安や不信感を取り除く、啓発普及効果もあげることができました。
 今後は先人の築いた大きな成果を財産に、引き続き開かれた研究所を目指し、産学官が連携し実社会に役立つ研究を進めるとともに、環境学習のための最新情報を発信して地域に貢献し、持続可能な社会の構築に寄与したいと考えております。

2020年4月

組 織

研究所長
柳橋 泰生 博士(工学)
福岡大学 工学部教授 (資源循環・環境グループ)
           (2020.4.1~)
研究開発室長
為,田 一雄 博士(工学)
福岡大学 工学部准教授(資源循環・環境グループ)
           (2023.4.1~)
 ※追記:樋口 壯太郎先生と、資環研の関わりについて
樋口 壯太郎先生は、令和元年度までは第3期所長として、
令和2年4月からは、福岡大学名誉教授として、資環研での研究活動を継続中です。


研究と活動

(令和2年度)の展望

(1)
研究活動
 
メインの研究テーマは引き続き「環境修復と未利用資源の資源化」とし、併せて研究成果の事業化、ベンチャー企業の支援、国際産学官連携活動を行う。具体の研究内容は2つの分野により構成される。
「資源循環分野」
廃棄物処理プロセスより排出される副生塩のリサイクルに関する研究(自主研究)
バイポーラ膜によるエコアルカリ、エコ酸の研究として、データ蓄積を行うため、一般廃棄物最終処分場脱塩副生塩、一般廃棄物焼却施設で重曹を排ガス処理薬剤として用い、2 段バグフィルターで回収された飛灰を用いてエコアルカリ、エコ酸を生成させる。また、エコアルカリについては中和剤等利用用途が多いが、エコ酸については用途に制限がある。重金属類の安定化剤の効率アップのための助剤としての活用研究を行う。

焼却主灰リサイクル研究(企業共同研究)
焼却主灰については現在、セメント原料リサイクルが行われている。企業との共同研究により、焼却主灰の洗浄分級等によるリサイクル研究を行う。

グリセリン水溶液の用途拡大に関する研究(企業共同研究)
グリセリン水溶液の脱窒剤利用については実用化と利用拡大を進める一方、メタン発酵基質、アスファルト滑剤、寒冷地における凍結防止剤等、グリセリンの性質に着目した新たな用途開発を行う。

「環境制御分野」
焼却プロセスで使用される薬剤が埋立処分に与える影響と対策(自主研究)
本研究は平成25年度環境省環境研究総合推進費に採択され、平成27年度で終了した。平成28年度からは長期的データを取得しており、データ蓄積結果より論文作成を行う。また継続研究として水中の残存キレート分解技術の開発を行う。

公共関与型最終処分場早期安定化研究(令和 2年度から令和 7年度・公益法人受託研究)
鹿児島県環境事業公社が運営する公共関与型最終処分場は日本最大の被覆型最終処分場である。平成27年度から令和元年度までの5年間、処分場の早期安定化のために室内空気の動向、集排水管内空気、浸出水モニタリング、埋立地内部温度測定を行った。また浸出水の脱塩処理に伴う副生塩のリサイクル方法の用途開発を行った。令和2年度から令和7年度までの5年間は第二ステージ研究として大型実験模型槽による廃石膏ボード早期安定化実験、埋立進行に伴う最終処分場内部温度および空気流出入への影響確認実験などの継続研究を行う。

最終処分場早期安定化研究(平成 23 年度からの継続研究・自治体受託研究)
旧法時代の最終処分場により、汚染された下流のため池を再生させるため、埋立地の安定化手法として霧状酸化剤の注入を行っている。その効果をモニタリングするため、ガス、浸出水、地下水調査を行う。また下流ため池には処分場建設前にはヒシが繁茂していたが、浸出水の漏水により死滅してしまった。安定化の指標として令和2年はガス、地下水等のモニタリングの他、生物毒性試験を行い、浸出水の安全性調査を実施する。

海面処分場安定化研究(令和元年度から令和 3 年度)
大阪湾広域臨海処分場の廃止に向けた研究を行う。模擬埋立槽8本を資環研に設置し焼却施設で使用される脱塩剤や飛灰安定化薬剤の影響確認と、早期安定化のための研究を行う。

覆土代替薬剤の開発研究(企業からの受託研究)
一般廃棄物最終処分場埋立容量の約30%を占める覆土材(即日覆土、中間覆土)の代替材として、現在、オーストラリアで開発され、滑走路や法面の地盤改良剤として使用されている生分解性薬剤(バイタル ボンマット ストーンウォール、バイタル ボンマット HR)の利用可能性に関する基礎的研究を行っている。基礎的研究内容としては、最終処分場内部への雨水浸透性能確認実験、屋外長期曝露による薬剤の生分解速度および浸出水水質への影響確認実験、経済性評価を行っている。基礎的研究後は、実際の最終処分場に試験的に導入予定である。

硫黄化合物の発生制御に関する研究(自主研究)
埋立処分により、廃石膏ボードからは硫化水素(H2S)が、重金属不溶化処理された焼却残渣からは二硫化炭素(CS2)が発生する。これら硫黄化合物の発生制御や分解、有害性低減に関する研究を行う。

残留する重金属不溶化剤の簡易除去方法の開発と硝化阻害軽減に関する研究(自主研究)
浸出水等に含まれる余剰の重金属不溶化剤を無害な金属薬剤と反応させて沈殿除去し、浸出水処理施設の硝化阻害問題を軽減可能か試験する。

上記研究の成果については1年に1回の成果発表会の他、1~2か月に1回開催している「廃棄物・土壌リニューアル研究会」で企業、大学の研究中間報告会を実施している。これまで開催は120回を超えている。
今年度から NPO、韓国安養大学、中国都市建設研究院等との国際連携による、研究会「SOS」(Study group on solid waste management)としてリニューアルする(主催者は樋口名誉教授)。その際、従来の参加型研究会と共に遠方の方や海外の方も参加できるようにし、研究の質向上、大学院生教育、国際研究情報交換の場として活動する。


(2)
広報活動等
毎年、実施している広報活動を行う。
第12回エコスクールの開催(新型コロナウィルスの感染拡大の影響により初のWeb開催)
資環研通信の発行およびホームページによる広報
エコテクノ2020オンライン見本市へ出展予定
成果発表会:令和2年11月27日(金)実施予定


(3)
事業化支援
研究成果の事業化支援を行う。令和2年度は引き続き、霧状酸化剤による環境修復装置の事業化支援を実施すると共に覆土代替薬剤の実用化に向け、実処分場での試験施工指導を行う。また北九州産学連携室には多数の企業、自治体等の相談があるためこれらの支援についても従来通り実施する。 グリセリン脱窒剤の用途拡大を行う。グリセリン水溶液は、脱窒剤として国内5箇所のし尿処理場や汚泥再生処理センターで実用化されている。引き続き、民間の排水処理施設の生物学的脱窒素処理への導入を目指し、脱窒素試験を行ってグリセリン脱窒剤の適応性を評価すると共に、協同研究企業へデータをフィードバックしてグリセリン脱窒剤導入へ反映させる。


(4)
国際連携
国際連携として中国都市建設研究院と焼却飛灰処理の技術情報交換および韓国安養大学と最終処分場技術交流を行っている。今年度から上海 SUS 社研究所と土壌汚染処理、焼却残渣適正処分についての研究交流を行う。また、インドネシア国立パジャジャラン大学と大気汚染対策に関する研究交流を進める予定である。

これまでの研究

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