2000年1月にダイオキシン類対策特別措置法が施行されて以来、3ng-TEQ/gを越えるダイオキシン類を含む焼却灰は、低減化処理をしなければ埋め立てできなくなった。現在実用化されている処理方法では、コストの面や処理効率の安定性の面で不十分な部分があるといわれる。当研究会ではプロジェクト(平成11年度NEDO)を組み、実証炉を製作して福大資環研近隣に設置し、より低温(400℃以下)で高処理効率で安定して化学処理できる薬剤添加法の開発と実証研究を行った。
2000年1月にダイオキシン類対策特別措置法が施行されて以来、3ng-TEQ/gを越えるダイオキシン類を含む焼却灰は、低減化処理をしなければならなくなった。焼却灰(主灰・飛灰)の中でも焼却炉の出口で回収される飛灰に、ダイオキシンはより多く(60-80%)含まれるため、飛灰中のダイオキシン処理が急務となった。現在、1000℃を越える高温での処理や、酸素濃度を制御して450℃以上で処理する方法が実用化されているが、コストの面や処理効率の安定性の面で不十分な部分があるといわれる。
研究会ではプロジェクトを組み、より低温(300℃から400℃程度)で化学処理できる薬剤添加法の開発と実証研究を行った。また、無害化済みの飛灰を用いた再資源化製品の開発も検討した。
飛灰に5wt%以下の薬剤を混ぜて400℃程度で1時間加熱するだけで、飛灰中のダイオキシン毒性換算等量(TEQ)は96%以上減少する。実証グループ・メカニズム解明グループ・再資源化グループ・生物処理グループ等に分かれて以下に示す形で研究を行った。
メカニズム解明のためのモデル実験から、薬剤(次亜リン酸化合物)を添加し加熱処理するとダイオキシン類モデル化合物は顕著に脱塩素反応を起こした。この反応は共存する金属類(無機化合物)の影響を受け、特にCaO共存のとき脱塩素反応は大きかった。また、薬剤がない場合にダイオキシン類モデル化合物の高塩素化反応を起こす銅化合物に対しても、薬剤加熱処理は非常に有効で、高塩素化を抑制した。実証実験から、400℃・1時間加熱処理の条件で、飛灰に1 wt%の薬剤を混合するだけで、飛灰中のダイオキシン類毒性換算等量が96%以上減少することがわかった。また、飛灰を前乾燥することでさらに効果が上がることを見出した。
<成果報告と展開の状況>
1)平成11年度 地域コンソーシアム研究開発事業ベンチャー企業支援型地域コンソーシアム(中核的産業創造型)「飛灰・
土壌中のダイオキシン類・有害重金属の省エネルギー型一括無害化処理システムに関する研究開発」成果報告書 (NEDO)
2)長田 純夫(福岡大学)、『脱塩素反応によるダイオキシン無害化処理システムの開発』、
化学装置、43、7(2001)68-78 ほか論文発表書籍等2件以上
3)山田 啓二(福岡大学)、リン酸無機化合物を用いたダイオキシンモデル化合物の分解について、
地球環境シンポジウム(2001) ほか学会発表7件以上
4)国際環境展、2000年4月13日~16日、東京ビックサイトほか環境関連展示会2件以上
5)日本経済新聞 (2000年5月31日)、『ダイオキシンを飛灰から除去実験』ほか新聞記事16件以上
6)研究会メンバーにより株式会社環エンタープライズ(福岡市.2001)を設立し、本薬剤添加法システムのコンサルタント
業務を開始。
7)本研究会から【炉解体環境対策研究会(会長:花嶋正孝 福岡大学名誉教授)】が派生した。約20社が参加し、4つの部会を
創設して活動中。
※このページの情報は平成12年時点のものです。